レベッカ

アルフレッド・ヒッチコック、1940。ヒッチコックの渡米第一作。かなり強引に物語は進行する。それもスリリングなサスペンスではなくラブロマンスだ。そしてふたりがマンダレイの屋敷に移ってからのゴシックな展開が見どころになる。前妻レベッカの影に怯えるヒロイン。レベッカ、レベッカ、レベッカという名は出るもののヒロインの名が呼ばれることがない。その対照ゆえにローレンス・オリヴィエは妻にしたのだが、その対照ゆえに屋敷では浮いてしまう。そして恐怖の家政婦ジュディス・アンダーソンがこの映画をアトラクティブなものにしていた。レベッカに鬼のように執着するこの家政婦に、ヒロインであるジョーン・フォンテインは大変な目に遭う。やっと終盤になってヒッチコックらしい映像演出が見られる。まずレベッカの死の瞬間の語るオリヴィエと、まるでそこにレベッカがいるかのようなカメラワーク。尋問でのスリリングなカット割も印象的だ。それ以外は、ヒッチコック映画としてはピンと来ない部分が多かった。レベッカの存在感は見事に執拗に演出されている。恐怖の家政婦がマンダレイの屋敷をレベッカとともに支配していた。レベッカを巡る思惑が交錯するとんでもない屋敷の女主人となったジュディス・アンダーソンは、これまでのヒッチコックの定番である「知りすぎていた男」ではなく「知らなすぎていた女」として屋敷に放り込まれ、愛の力で状況を打開する。前半のラブロマンスの強引な語り口には上手さが見られなかった。ラストの屋敷の炎上はすごかった。幸福な主演のふたりと、より幸福な家政婦の炎上は見ごたえがあった。90点。