天国は待ってくれる

エルンスト・ルビッチ、1943。ルビッチ唯一のカラー作品。クレジットの出し方は小津が影響を受けたと思われる。あとは階段や廊下を使った動きのあるショットも小津はよく使っている。扉の使い方はルビッチならではのものだ。この映画は女遊びをしてきた男ドン・アメチーが地獄の入口で人生を振り返るという形式をとっている。祖父チャールズ・コバーンとドン・アメチーが喜劇的世界を構築している。その喜劇に必ず巻き込まれる従兄弟の存在もチャーミングだ。そこにラブロマンスも描かれるのだが、これらはいわゆるソフィスティケイテッド・コメディとされる上品さでもって描かれている。愛や裏切りなどを深追いしたりはせず、一見薄っぺらな描き方に思えるのだが、妻ジーン・ティアニーとのラストダンスを涙なしには見られないものにするその演出力こそ、晩年のルビッチの素晴らしさなのかもしれない。初期テクニカラーのべったりとした色合いも映画を印象づけている。カラフルなセットがあり、人物は白黒を基調とした服装をしている。なぜならこの映画はおそらくすべてが男の誕生日を祝う日の出来事になっているからだ。そうして自然な形で衣装がもちいられ効果的にテクニカラーのなかで存在感を放っている。女道楽の遊び人の物語としては上品すぎる部分はある。しかし、これほどまでに登場人物がいい人ばかりであったり、もしくは喜劇化されたりするところを見ると、そんな俗っぽい部分は描く気もないのだなと素直に思えてしまう。そんな演出こそルビッチのルビッチたる所以ではないだろうか。95点。