ぼんち

市川崑、1960。オープニングで連発される風景ショットからかなりモダンである。それ以前の巨匠がやらないオープニングである。戦前から戦争末期にかけての市川雷蔵の女性遍歴が本人の回想という形式で語られる。時代の変わり目でいろんなショットが小気味よくはさまれるのだが、クローズアップの使い方や、戦争絡みの様々な描写などを見ると日本映画が時代の変わり目にきているという感じする。競馬場の撮影プランなども新鮮だ。屋内になると少し停滞する部分もあるのだが、そこは宮川一夫の技巧が冴える。大胆なアングルショットは数知れず。足元を追いかけたり、俯瞰のショットも素晴らしい。その他、市川崑のやや前衛的な撮影プランに職人として見事に答えている。物語はまず毛利菊枝と山田五十鈴の二人組の怪演に度肝を抜かれる。この映画は全編を通じてこの二人組がいい緊張感を作り出している。女性遍歴の話だから華もあり艶やかだ。この映画は、順番に遊女が登場するのだが、若尾文子のくだりだけは映画からふわっと浮いた華やかさがあった。ピンクの傘を真上から俯瞰で撮ったあのショットはスコープサイズと相まって、瓦などとも相まって、びっくりするようなショットになっていた。それを一度カットして近距離からのショットをはさみ、市川雷蔵の視線に持っていき、視線の先の若尾文子という流れは鮮やかすぎて本当に驚いた。若尾文子は二人組とも堂々渡り合い、そのあと橋を渡るシーンもまた素晴らしいし、祭りみたいなシーンは前衛的な撮影が見られるのだが、そこでも若尾文子は素晴らしい。市川雷蔵は彼にしかできないような役を見事に演じてみせた。95点。