アンジェリカの微笑み

マノエル・ド・オリヴェイラ、2010。宗教的モチーフがかなり明確に提示されている映画だ。アンジェリカの語源は「天使」を意味する。カメラマンのユダヤ人イサクは、あのアブラハムの息子のイサクと同名であり、そのイサクは旧約聖書では天使に救われる。だからラストは天使に救われたイサクってことでいいんじゃないかと想像した。映画において死はアンハッピーエンドではない。生きる=動くとするならば、そもそも映画というのは動いているように見えているだけであり、実際は静止している。つまり端から死んでいるのだ。この映画では死人アンジェリカが動く。これぞ映画である。それをカメラのファインダー越しにイサクは見る。写真は映画を暗示している。イサクは映画を撮り、その映画を何度も見返すことになる。やはりアンジェリカの撮影現場が圧倒的にスリリングだ。最初にアンジェリカが映るショットの美しさは驚きに近いものがあった。その後のファインダー越しのアンジェリカも素晴らしい。序盤にしてすでにハイライトといえるシーンだった。窓とドアはモチーフとしてものすごく効果的に使われている。基本的に開けっ放しであるためそもそも意味深であり、そうなると閉められることで強い意味を持つことになる。映像はとても絵画的な美しさがありフレーミングは緩やかだ。ユダヤ教とカトリックがこの映画では重要な宗教的モチーフとして描かれているのだが、宗教色が強すぎて少々ゲンナリしてしまった部分がある。悠然と構えるオリヴェイラに、いつもはこちらから身を委ねる感じになるのだが、この映画の場合はそうはならなかった。90点。