アンドレイ・タルコフスキー、1974。1回見て、ストーリーをまるで勘違いしていたからもう1回見た。で、ストーリーはある程度わかったものの、ストーリーを認識することに集中してしまい、1回目に見たような撮影や演出が織りなす映像美学の衝撃はなく全然別のものになってしまった。だからこの映画は3回くらい見るのがちょうどいいと思う。それくらいこの映画は様々な視座を与えてくれる。この映画で本が一冊書けてしまうくらいだ。鏡というテーマの範疇はものすごく広い。言葉では説明が厄介なものを多分に含んでいる。内在的に存在する記憶を照射することで起こるズレのようなものを映し出すモチーフとして鏡が使われる。冒頭の吃音の男に内在する言葉と実際の言葉のズレとその修正も同様である。イメージを再現するという意味では、この映画自体が鏡に照射された映画だといえる。この映画では3つの時代が描かれている。でもそれほど単純ではない。物語は存在するのだが断片的であり説明は省かれるのだ。カラーとモノクロを使い分けるのだが、明確な使い分け方がよくわからない。母と息子は一人二役だから余計にややこしい。撮影技法や演出技法はブリリアントであり申し分ない。特に風がすごいのだが、鏡や雨や水や火といったモチーフ描写の美しさは驚異的だ。記憶から呼び起こされる記憶が幻想や歴史を想起したり、視線のカット割で時代を変えてしまったり、同じショット内で時代を変えたりもしている。自伝的ともいえるこの映画は、語りを巧みに複雑化させながら、それを映像詩として見事に浮かび上がらせている。100点。