彼女がその名を知らない鳥たち

白石和彌、2017。大阪を舞台にした、しみったれラブ・ファンタジー。阿部サダヲが出ているとは知らなかったのだが、知らなかったからこそ見たのだが、彼がメインで出ていればもうホラー映画になること必至である。ただ一人独壇場のように浮きまくる阿部サダヲに対して蒼井優は引きずられることもなくよく演じており、さすがに役者が違うというところを見せつけていた。この映画は阿部サダヲが犯罪者だと思わせておいて実は蒼井優が犯罪者で阿部サダヲは共犯者であるという謎解きがある。この謎解きのためにどれだけつまらない時間を必要とするのだろう。そんな謎解きを重要ですと描くことがそもそも必要だったのか。ダメ男とダメ女のなかでハッと理解する瞬間があるだけでいいんじゃないかと思ってしまう。この映画にはロクな男が出てこない。ロクな人間が出てこないといってもいいくらいだ。そんな状況では、蒼井優の演技力にすべてを委ねるしか見る方法がなかった。実際蒼井優はそれに答えるだけの演技をしていたのだが、映画としては全然物足りない。主演以外は善人と悪人しか出てこない映画だから物語としての面白味は当然ない。その主演ふたりのうちひとりはすべてをホラー映画にしてしまう阿部サダヲという男だ。多分自分のなかには阿部サダヲ恐怖症というものがある。阿部サダヲという役者の存在が謎で怖い。それにこの映画の人物の描かれ方に文句がある。やなやつばかり登場するし、謎をメインにするがゆえにふたりを描き切れていない。85点。