眼下の敵

ディック・パウエル、1957。潜水艦モノの定番ともいわれる映画。映画をおもしろくする様々な要素が見事にハマった感じがして相当に楽しめた。スポーツ競技のような心理ゲーム的な部分が娯楽性を持って描かれている。それも決して大きな仕掛けではなく低予算なアイデアが満載なのだ。この映画は戦争が持つスポーツのようなゲーム性を強調させることで見事に娯楽映画として成り立たせている。ただし戦争に対してはかなり言及している。そもそも両軍の指揮官が反戦というか厭戦的であったり、娯楽映画だから殺しまくるといったこともなく、負傷者や死者への敬意も忘れない。そして米軍と独軍は平等に描かれている。そういった戦争に関する事柄はかなりクールに描かれている。高らかに反戦を歌うこともなく娯楽に埋没させたりもしない。この映画のゲームのようなスリルを発生させているものは爆撃などではない。それは心理戦であり、見えない相手との戦いである。それを見事に演出するのがソナー音だ。この映画は音の映画といってもいいすぎではない。ソナー音を筆頭に船内の音、爆撃音、そしてサイレント、さらには歌を歌うシーンまである。駆逐艦と潜水艦という見えない関係から音の重要性が生じるのだが、その状況を映画は見事にとらえている。そしてスポーツのようなゲームを展開させることによって見えてくるのは相手への敬意である。この映画はその部分においてスポーツと戦争を同列に扱う。誰も敵の個人を憎んだりはしない。そこに感じるヒューマニズム的な映画の美学とスポーツマンシップが簡単に共存しているように見えるのがこの映画の魅力になっている。95点。