シェルブールの雨傘

ジャック・ドゥミ、1964。まずオープニングクレジットのインパクトと美しさ。これは間違いなく映画史に残る名シーンだ。オープニングクレジットでいえば『レイジング・ブル』も美しくて大好きなのだが、それに匹敵する素晴らしさがある。この映画はよくあるミュージカルとは異なり普通の台詞がない。つまりすべての台詞は歌として発せられる。普通のミュージカルであれば台詞と歌の二層構造が楽しめるのだが、この映画ではそれをなくしている。ミッシェル・ルグランの圧倒的なスコアが台詞を引き出しまくる。通常ではあり得ないくらい音楽が物語に介入しており、かなり実験的な試みだったのではないかと想像する。実際のところ映画はかなりの完成度を誇っている。しかし90分くらいしか持たない。そのあたりに音楽と歌で進行する物語の限界が垣間見えるような気がした。撮影をある程度犠牲にしてまで音楽が優先されており、ここまで極端なものが成功するのだからやはりドゥミとルグランはすごい。物語は結構単純なもので、尻軽ドヌーヴと被害者男性の悲恋の物語だ。尻軽ドヌーヴと被害者男性は序盤で見てられないくらいアツアツになって引き離される。そしてラストで再会するのだが、そのときのドヌーヴの美しさといったらなかった。あんなに美しいドヌーヴがいたら道を踏み外してしまってもいいと本気で思った。しかし被害者男性は道を踏み外すことなくいまある幸せを謳歌するのだ。尻軽とはいえドヌーヴほどの女と大恋愛をして裏切られたら、立ち直れないような気がする。しかしこの映画は立ち直りの成功例を見せてくれた。今後の人生に役立てたいと思う。95点。