ロシュフォールの恋人たち

ジャック・ドゥミ、1967。『シェルブールの雨傘』と立て続けに見たのだが、このふたつの映画は比較してもしょうがない。でも比較すると、形式的な違いがまずある。それにともなう役者の質が違う。まずミュージカルという形式で見ると、『シェルブールの雨傘』において台詞は歌のみで構成されている。とてもストイックで実験的な形式だ。一方、この映画における台詞は通常台詞と歌という一般的なミュージカルの形式となっている。そしてこの映画にはダンスがある。そのような形式的な違いは、選択肢の増加を生み出すものばかりなのだが、この映画はその増加分を目一杯使いまくっている。そもそも脚本から素晴らしい。『シェルブールの雨傘』で見られた安っぽさはなくなり、『ローラ』のように人物が円を描くようなエレガントなドゥミらしい脚本になっている。撮影も素晴らしくロケーション撮影が特にすごい。明らかなセット撮影なんて見当たらないくらいなのだが、クレーンを使ったロケーション撮影が見事だ。後退しながら上昇するショットが反復されるのだが、その反復されるショットは映画を形作るほどのインパクトを持っておりとても効果的である。ロケーションの中心となる広場とカフェは迅速に設定され有効利用されている。街角で一組だけダンスをしたり、逆に一人以外すべての人がダンスをしていたりといった動きも素晴らしい。ミュージカルコメディになるのかわからないのだが、ジーン・ケリーにしても双子のダンスショーにしても、殺人事件にしても大きく扱わないところがなんとも素敵である。100点。