逃走迷路

アルフレッド・ヒッチコック、1942。ヒッチコックを順番に見ているのだが、もうすでに飽き飽きしてきたパターンの映画だ。知りすぎていた男が女を連れていろんなところへ逃亡する。そのなかでヒッチコックのアイデアが過剰サービスのように炸裂するのだ。そしてとんでもない見せ場がある。ラストの映画館と自由の女神は凄まじかったし、オープニングの黒い煙もすごかった。しかしこの映画はアイデアが消化不良のまま放置されすぎているような印象を受けた。そうした傾向はヒッチコック映画には往々にしてあるものなのだが、この映画はそれが多すぎた。時代を考えるとプロパガンダの影響だと思うのだが、人道主義的なシーンが多く見られる。それらはとても説明的でいかにもプロパガンダな感じで奇妙な違和感があった。素晴らしい映画館での銃撃戦を見て、この映画を映画館で見た人がうらやましくなった。このシーンは映画館で見ないとその効果を十分に堪能できないからだ。そして有名な自由の女神のシーン。このシーンはほとんどすべてのショットが素晴らしいのだが、一番素晴らしかったのは、破れつつある袖の超クローズアップから、自由の女神を下から超ロングショットであおるカット割だ。中間距離を排することによって、袖の糸から自由の女神へ、最小から最大へカットされたときの驚きは、まさにヒッチコック的演出であり、その演出効果は撮影技法によって見事に最大化されている。モノクロ映像は締まりがあってとてもよかった。ヒロインはいるのだが、役割もロマンスもテキトーだった。90点。