大冒険

古澤憲吾、1965。ドタバタ喜劇。植木等はよく運動しているのだが、キートンのような超人的な驚異はまるでない。アクションにともなうスリルという意味では、ヒッチコックの爪の垢を煎じて飲んでほしいと思わせるほど凡庸な映画になっている。実際、植木等はヒッチコック映画の知りすぎた男のようでもあり、警察と闇の組織に追われるという設定はヒッチコックの影響が少なからずあると思う。しかしそれは設定だけで終わってしまい、脚本以降のどこかでドタバタ喜劇に決め込んだ印象がある。植木等ではひたすらつづくドタバタを二時間近く持たせられない。それは植木等の適正の問題であり監督の手腕の問題だと思う。スリルをあまり演出できておらず、ドタバタドタバタと潜水艦までいたる流れはどこを削っても問題ないと思わせるだけの無駄がある。ラストの潜水艦こそ喜劇役者の出番だと思ったのだが、ここでヒトラーをはじめみんな喜劇を真面目にやってしまう。喜劇人で固められた闇の組織なんて想像しただけでわくわくするのだが、例えば由利徹なんかは検問所の警察官として登場するだけなのだ。ショットのつながりは見ていておもしろかった。イマジナリーラインを土足で踏み越える大胆さがあるのだが、映画自体にはその大胆さがなかった。つまらない映画だとは思わない。ただもっと良くなる要素が多すぎるから見ていてだらけてしまった。上映時間106分というのはドタバタ喜劇としても古澤映画としても長いほうだと思う。それなりに予算も使っているようにも見える。しかし長さと予算の相性はあまりよくない。90点。