フィラデルフィア物語

ジョージ・キューカー、1940。映画というものは脚本からスタートするものだと思っていて、その前に原作となる小説や漫画や舞台劇などがあろうとなかろうと知ったこっちゃない。だから、脚本からスタートするのに脚本以前をほのめかすような映画はあまり好きではない。そういう意味でいえば、この映画は脚本以前に舞台劇が存在することをあえて前面に押し出しており、したがって映画の作り方も舞台劇に近いものになっている。そのためこの映画はブロードウェイ舞台の拡散でしかないように思える。悪くいえば舞台劇の宣伝映画や便乗商法に成り下がっているのだ。物語はとてもおもしろい。もう一度見たらもっとおもしろいだろう。それくらいキャラクターの細かな設定がちゃんと効いている。キャサリン・ヘプバーン、ケイリー・グラント、ジェームズ・スチュワートという大スター夢の共演も楽しめるし、監督のジョージ・キューカーも舞台劇のようではあるがマトモな仕事はしている。この映画はアカデミー賞で脚本賞とジェームズ・スチュワートが主演男優賞を獲得している。ここにもケチをつけたくなるのだが、この優れたフィリップ・バリーによる戯曲を脚本化するのはそれほど難しいものだとは思えない。そしてこの映画のジェームズ・スチュワートはそれほどでもないように思えたし、舞台版もこなしたキャサリン・ヘプバーンこそ主演女優賞にふさわしい演技をしていたと思う。この映画はみながいい仕事をしているし、特に際立つものもあるのだが、それら相乗効果をもたらしていないことはとてももったいない気がした。90点。