冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

ジョニー・トー、2009。相変わらず魅せてくれる監督である。当代きっての銃撃戦演出家ジョニー・トーだけのことはあり仕掛けが満載なのだが、冒頭からやってくれる。マカオの一家皆殺し事件だ。しかしフランス人の妻は生きており、フランスから親父ジョニー・アリディが駆けつける。そして復讐劇がはじまるのだ。雇った殺し屋は案外簡単に皆殺しの犯人を特定する。そして月夜の銃撃戦が展開されるのだが事件が発生する。アリディが記憶喪失を起こしてしまい、自分が何やってんだかわからなくなるのだ。となると復讐劇が成り立たなくなるのだが、そのことが映画をさらにおもしろくしている。アリディは物語を牽引する力を失う。これは復讐劇なのだという脚本の強引さにアリディもなんとかついてゆくような形になる。ゴミ置き場のような広場は最高のシーンが見られる。自転車をみんなの銃弾で前進させる牧歌的な演出。立方体のゴミの詰まったやつを転がしながらの銃撃戦もゲーム性が高い。これをボスは特等席から眺めており、カメラも特等席から撮る必然性が生まれている。子どもが有効に使われている。バーベキューでは焦らし要員となり、終盤ではボスに目印をつけまくる。最終盤の銃撃戦の孤独なアリディは想像を絶するものがある。アリディはこの映画の主役であるのに記憶喪失によって明確な心理状態がわからない。子どもも参加してゲームのような遊び心満載の演出があり、そしてここでもアイデア演出が炸裂してボスを仕留めるアリディ。果たして復讐劇とは何だったのか。ラストの解釈とは。でもそんなこと考えなくてもいい映画になっている。95点。