恋恋風塵

ホウ・シャオシェン、1987。個人的にはヌーヴェルヴァーグよりも先に、というよりは一番最初の映画どっぷり体験として台湾ニューシネマの洗礼を浴びまくっており、だからこのあたりのホウ・シャオシェンの映画は思い入れがありすぎて正常に見られない。フィルムでも見ているのだが、ボロッボロのビデオテープで見た21インチブラウン管テレビの映像の質感が記憶に残っている。約四半世紀ぶりにデジタルリマスター版DVDを見たのだが、リー・ピンビンの撮る映像の美しさは当然ながらビデオテープから格段に上がっていた。しかしやはり映画の原体験を超えるような感動は得られなかった。あと数回見なければ正常モードで見られないと思う。この映画の演技というのか演出というのか、特に年寄りと子供が素晴らしい。大人も子供も役者として素晴らしい分、大人でも子供でもない主人公たちの不器用さが演出として生きている。電車よりも線路が強烈なモチーフとして浮かび上がる映画もめずらしい。点と点を結ぶ線としての線路があり、それは田舎と台北とを具体的に結びつけたり引き離したりしながら、少年と少女も結びつけたり離したりする。冒頭のトンネルから、劇場のスクリーン、野外スクリーン、テレビ画面といったフレーム内フレームや、被写界深度の浅いショットなど、レイヤー構造のような映像が多く見られる。線路が点と点ならこちらは面と面といえるだろう。面と面は同じ画面にあるのだが交わることのないちがう世界だ。これらの演出は映像美学と映画のテーマの両方に深く介入していて、だからこそ素晴らしいのだと思う。徴兵された息子を送る爆竹ジジイはかっこよすぎた。100点。