パリ20区、僕たちのクラス

ローラン・カンテ、2008。教師が卑猥な言葉で生徒の行いを罵り、その流れで生徒による偶然の暴力沙汰が起こり、その生徒は退学処分となる。この映画の見どころのひとつなのだが、この一件は実に示唆に富んでいる。まずこの学校では、どこの学校でも少なからずあるであろう闘いが勃発しているわけなのだが、それは言葉による闘いでなければならない。主人公の教師が国語教師であることも象徴的である。そして退学になる生徒は言葉ではない暴力を行使したため退学となり映画から排除される。この映画は学校のなかの映画であり暴力や退学は映画の外を意味する。この終盤のシーンによって、この映画が言葉の映画であることが明確に浮き彫りになる。ここでの言葉の闘いにおいて教師は敗者だ。国語教師であるにもかかわらず卑猥な言葉を使ってしまう。生徒たちは異常なまでに反応する。その食いつきっぷりは半端じゃない。この映画はほとんどが教師と生徒の言葉の闘いだ。移民が多い地域の学校ゆえに人種の闘いもかなりある。生徒間の闘いもあるにはあるのだが、中国系移民のいじめ問題などが描かれることはない。描かれるのはフランス人教師と移民生徒の闘いだ。そして闘いは教育と類似している。この映画は心理描写はかなり抑制され、言葉の力に頼りながらこころのなかも描いていく。それは撮影スタイルにも同じことがいえる。ドキュメンタリーの手法で撮影しながらも、見えてくるのは劇的な教師と生徒の躍動である。尺が少し長いような気もするし、ラストは取ってつけたような気もする。しかしフランスらしい偏屈さと豊潤さをあわせ持った素晴らしい映画だ。95点。