白い恐怖

アルフレッド・ヒッチコック、1945。数々の驚くような映画技法が見られるなかで、展開される物語はやや退屈な部分がある。しかしこの映画を見てやはりヒッチコックはすごいと思わされた。根幹をなす脚本にはかなり欠点がある。精神医学で謎を解くという流れをうまく作れていない。無理やり感が相当に感じられたし多分もう一度見たらさらなる無理やり感が感じられるだろう。それに対して映画技法は相変わらずのアイデアマンっぷりを炸裂させており飽きさせない。イングリット・バーグマンとグレゴリー・ペックのキスシーンの扉、ペックの弟殺しの演出、ダリをいかにもダリらしく使った夢のシーン、牢獄の影とバーグマン、そしてダビーに響く「知ってる、知ってる」からのラスト、パンフォーカスでの銃口とバーグマン。あげればキリがないほど際立った演出が見られる。この映画はヒッチコックにしては恋愛が不自然ではないのもいいのだが、それはバーグマンの力量抜きには語れないところだろう。映画のなかで唯一バーグマンは一貫して素晴らしかったといえる。とにかく欠点が見られる映画であることはヒッチコックの慣例のようになっている。そしてそれを補って余りある映画技法、特に撮影技法によって欠点を凌駕してしまうのもまた慣例となっている。この映画もご多分に漏れず慣例に従っている。全体的にはまあまあ、もしくはイマイチなのだが、際立っている部分が多々あり、主演女優バーグマンが素晴らしい。だからどう評価していいのかよくわからない映画だった。90点。