私は告白する

アルフレッド・ヒッチコック、1953。冒頭から死体まで、ヒッチコック以外の人物がひとりも登場しない風景ショットと「DIRECTION」という文字と矢印。『見知らぬ乗客』につづき冒頭から度肝を抜かれる演出が炸裂している。この映画は『見知らぬ乗客』のような遊び心満載の演出が控えめで真面目な映画という印象だ。しかし序盤の明らかにムルナウ『最後の人』のオマージュであろう人物と影の演出など、強烈なビジュアルイメージが随所に見られる。絶品な演出ではないのだが、回想シーンで連発されるカメラのパンなどはいかにもヒッチコックらしいものだ。物語はモンゴメリー・クリフトが関わるふたつの案件、弁護士殺しとアン・バクスターとの関係のくだりが、偶然すぎる結びつきを見せながら展開される。それはそれでいいのだが、アン・バクスターのくだりにひねりもなんにもないところがやや不甲斐ない。言いたくないんだけどすぐに大いにバラしてしまうし、バラしたところで大した変化が起こるわけでもない。クリフトとバクスターとバクスター夫の愛にまつわる描写に関してはかなりお粗末な印象だ。しかし見所である殺人に関してはクリフトの神父らしい佇まいと表情が映画を引き締めていた。『見知らぬ乗客』と同じロバート・バークスが撮影を担当しており、ショットの的確さみたいなものは両作品とも素晴らしいものがある。宗教を扱っているせいなのかシンメトリーを生かした構図が多数見られた。特に序盤の夜の街路の光と影が織りなすシンメトリーなショットは素晴らしかった。90点。