泥棒成金

アルフレッド・ヒッチコック、1955。ヒッチコックほど映像で語る映画監督はあまりいない。そんなヒッチコック映画のなかで、この映画の映像演出は他とは少し様相が異なる。野心的な映像演出が過剰なまでに炸裂するような、ヒッチコック的な映像演出はあまり見られない。代わりに優雅で華麗な映像美によって大いに映画は語られるのだ。まずこの映画ではじめてロケーション撮影をするヒッチコックを見たのだが、ロバート・バークスの撮影と近年のリマスタリング技術が素晴らしかった。あまりにも美しい映像が映画全体を貫いている。特に空撮などの俯瞰ショットは圧倒的だ。ロケーション撮影はもうそれだけでわくわくするようなきらびやかさがあった。そしてそこにいるのがケイリー・グラントとグレース・ケリーという大スタアなのだから美的映画としては申し分ないのだ。物語の進行もゆったりとしておりかなり優雅な映画になっている。個人的にはグレース・ケリーのママがよかった。ケイリー・グラントを読み切る力には説得力があったし、娘のグレース・ケリーとの対照も効果的に描かれている。正体をバラしたときの対照やケイリー・グラントに対する静と動の対照も効いていた。ただ映画としていまいち乗り切れなかったのは、やはりヒッチコック的な映像演出があまり見られなかったからだろう。映像での語りが強いのはいつものヒッチコックなのだが、ヒッチコックの署名入り映画という感じがしないのだ。署名などなくても構わないのかもしれないし、署名とはなにかという問題はあるのだが、グレース・ケリーの映画という紹介をしたくなるようなエレガントな映画だった。90点。