ツールボックス・マーダー

トビー・フーパー、2003。映画を構成する要素が、偶然もあるのかもしれないのだが、見事に調和している。低予算らしい照明や撮影、舞台設定と見事に合致するような華のない役者たち、様々な工具と改築中のボロアパート。同時に鳴らされる複数のノイズ。そしてトビー・フーパーの見事なホラー演出。改築中のアパートは工具箱みたいだし、撮影しているカメラは工具箱に転がっていそうなチープでリアルな感じがする。この映画を見ているとカメラと工具箱の距離がすごく近いような気がして怖くなるし、登場人物も同様に工具箱に近いガラクタ感があり、それがリアルさを醸し出している。すべてがガラクタな感じはアパートという状況がセッティングされることによって決定的となる。物語はほぼすべて改築中のアパート内部で展開される。冒頭、殺される女に寄り添いながらカメラはアパートに侵入する。それから主役の夫婦がフォーカスされるのだが、一晩のうちに群像劇的に登場人物が見事に描写されてゆく。この脚本と演出の巧みさがあるからこそ、本筋のホラーも面白味も増すというものだろう。視界を覆うカーテンやビニールや雨や画面や覆面や光や闇なども効果的だ。ホラー映画のことはよくわからないのだが、この映画は原点回帰型でありながら、現代の安価な撮影によるチープな感じを最大限に利用している。アパートオンリーの撮影ではミニマムな状況を見事に最大化している。そこで際立って見えてくるものが工夫でありアイデアなのだ。そしてホラー映画というものは、恐怖がありアイデアがあるだけで十分価値があるものだと思う。95点。