ハリーの災難

アルフレッド・ヒッチコック、1955。いかにも英国的なユーモアあふれる物語が、ヒッチコックならではの演出によって語られている。非日常がまるで日常のように語られるのがこの映画の特徴だ。ドラマチックな出来事が控えめに日常的に語られるのだ。こじんまりとした映画なのだが完成度はかなり高い。これがデビュー作となるシャーリー・マクレーンが素晴らしく、相手役のジョン・フォーサイスはイマイチだった。また足の演出がたびたび見られ、そのどれもが素晴らしいのだ。ただこの映画は英国的なユーモアに笑ったりワクワクしたりするのが通常の楽しみ方だと思う。そういう意味では冒頭からすでに楽しめずに映画に入ってしまった。なんで死体を見て驚かないのかわからない。多分その事自体がおもしろいのだと思う。それは理解できるのだが、笑えないしワクワクもしなかった。映画の肝心要の部分でそんなだからこの映画の感想なんてあまり書いてもしょうがない。たとえば同じテイストでいえば英国産の『マダムと泥棒』のほうが米国リメイクの『レディ・キラーズ』よりもおもしろかったように、この映画もゴリゴリの英国映画であればもっとわかりやすかったと思う。バーナード・ハーマンはこの映画ではじめてヒッチコックと組んだのだが、とてもいい仕事をしている。映画のテイストをしっかり把握している感じの音の使い方が素晴らしい。この映画は、映画そのものとしても、ヒッチコック映画としても、評価にバラツキのある映画だと思う。評価にバラツキがあることは、映画のみならず諸芸術全般においてとても素敵なことだと思っている。90点。