ロルナの祈り

ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ、2008。ダルデンヌ映画にしては、執拗に追っかけるようなカメラ演出も少なく、比較的安定した撮影プランのもとで撮られている。そのおかげで夜の照明はかなり美しいものになっている。EUを意識しているかのように、青と黄色が強調され、他には赤や緑や白が目立っていた。物語はロルナを密着マークしながら進む。見る者はロルナの知らないことを知ることはない。ロルナに制限された語り口と、物語全体のモチーフにもなっている偽装というものが、ロルナの妊娠のくだりにおいて決定的に作用したとすれば、この映画は成功したといえるだろう。ただ個人的には妊娠のくだりからいろんな解釈はできるもののどれも決定的にはならなかった。あとは演出に見られるいつもの厳しさと、特に終盤の流れというものはどうにも相性が悪いように感じた。森や小屋を厳しく撮っておくならばラストの音楽の入り方は厳しさを台無しにしている。あとは撮影プランの影響なのか躍動感が少ない。おそらく多くの人がチャリ男とロルナが走るシーンに美しさや躍動感を覚えたことだろう。あそこで見られたような躍動感がこの映画には少なすぎる。とはいえ一般的な映画から見ればかなり説明や感情描写を省略しているし、主に撮影が生み出す緊張感はひたすら持続している。しかしロルナを密着マークするがゆえに、ロルナを演出しきれていないことが露呈されているように思えた。90点。