ラ・ジュテ

クリス・マルケル、1962。異色の短編映画。映像が動画ではなく静止画によって構成されている。短編映画を普段あまり見ないから物足りなさはあるのだが、その鮮烈なイメージを維持させるのに30分というのは適切だったように思う。この映画は過去にとらわれた男を主人公にしたSFラブロマンスのような形式になっている。動画が過去を大量生産することでしか成り立たないという軽薄さやはかなさは映画が誕生してからずっと持たれてきた感覚である。この映画はその過去の大量生産を阻止している。動画という見えもしない瞬間によってではなく、静止画という瞬間の持続によって見える映画をつくることに成功している。1/24秒の静止画が数秒まで持続することで、はじめて瞬間を凝視することができるのだ。だが結局のところ、素早いカット割りでエモーションはつくりだされているし、唯一動画となる女の映像にはなんの深みも感じられなかった。この映画の最大の強みはナレーションと白黒写真だけで構成され、一切のムダもなく30分であっさりと終わることだろう。それらの構成要素の凝縮がタイトでソリッドで窮屈な空間と瞬間をつくりだしている。それは映画体験として一般的な映画とは異なるものだ。この映画は映画が好きな人なら誰もが体験すべき映画だろう。上映時間も30分だから簡単に見られる。そしてこの映画を見ると一般的な映画がものすごく見たくなる。映画とべったり寄り添いながらもアート的な飛躍をしているあたり、さすがヌーヴェルヴァーグ界隈という印象があった。95点。