カサブランカ

マイケル・カーティス、1942。この映画は同時代のハリウッドの古典と比較すると魅力に欠ける。演出が一本調子でだだだだだと話が展開してゆくさまは見ていて気持ちのよいものではなかった。ちょっと恥ずかしくなるような政治的な展開もプロパガンダ映画ならではのものだ。イングリッド・バーグマンはバーグマンらしい安定した演技を見せている。しかしこの映画はハンフリー・ボガートの映画だ。クセのある演技がクセのない演出を強引に引っ張っている。たとえば、ニコラス・レイの『孤独な場所で』で見られたようなボガートの凄みは、この映画では見られない。それでも他にふさわしい俳優がいないと思わせるほど、ボガートの佇まいと演技は別格である。技術屋たちはいい仕事をしているのだと思う。しかしマイケル・カーティスの演出は疑問だ。その演出からはどこか軽薄な印象を受けた。シーンの流れの一本調子な感じは演出力不足を露呈している。さらにこれといった魅力的な場所もセッティングされない。場所となるとボガートの店くらいしかないのだが、魅力的な空間としてセッティングされることはない。映画を作る上での時間と空間の創造力、もしくは想像力という点でこの映画は力不足な感じがする。戦時下のハリウッドでプロパガンダという状況がそうさせたのかもしれない。とにかくハンフリー・ボガートとイングリット・バーグマンはたくさん映っている。だからスタア映画として見れば楽しめる映画にはなっている。90点。