北北西に進路を取れ

アルフレッド・ヒッチコック、1959。ケイリー・グラント劇場ともいうべきアクションの数々。そしてケイリー・グラントの知識の範囲に基本的には制限されるのだが、その制限を失っていくエヴァ・マリー・セイントの登場。ヒッチコックは男女を描くのがうまいとは思わないのだが、この映画では愛があり苦悩があり、仲違いがあり、ハッピーエンドがある。この時代がヒッチコックの黄金期といったところなのだが、そのなかでもこの映画は一番見やすいのではないかと思う。「間違えられた男」であり「知りすぎた男」をケイリー・グラントが演じている。グラントがよく動いているのは見ていて楽しくなる。グラントらしい小ネタの機動力も最大限に生かされている。飛行機のシーンは素晴らしいのだが、あれは世界一有名なアメリカの田舎の道路だろう。あれかもしくはロバート・ジョンソンが魂を売った交差点。最後はラシュモア山に逃げて落ちそうになってみようってな具合に定番の落っこちネタを披露するのだが、ラストがなんとも見事である。列車内の演出が見事だったからこそラストが効いていているのだろう。エヴァ・マリー・セイントが怪しくて魅惑的な女性として見えたのもあの列車があったからだ。今回は脚本のアーネスト・レーマンのみなあらず、ヒッチコックの脚本の小細工もすこぶるいいような気がした。映像演出の技巧派としては随所にすごさは見えるものの、今回はより丁寧に作られている印象がある。エンタテインメント映画としては文句なしだろう。グラントとヒッチコックはこれがラストということで悲しい。100点。