アルフレッド・ヒッチコック、1963。この映画は、オープニング・クレジットを見るだけで、ただならぬ映画だとすぐにわかる。特に際立っているのが音の使い方で、鳥の鳴き声はもちろんのこと、不安を煽る様々な音がコラージュされており、怖いというより芸術的であり感動的ですらある。そして鳥のアタックがあるわけだが、一番素敵なのが学校から逃げる子どもたちへのアタックだろう。その直前で、ロッド・テイラーと増えるカラスのカットバックがあり、それから子どもたちは逃げる。ここでも芸術的な音が炸裂するのだが、それにもましてスクリーン・プロセスが素晴らしく効果的である。この映画は様々な演出で鳥を見せている。音だけの演出は台詞のない映画を作り出す効果もありとても重要だ。しかし音と映像のコラージュという意味でスクリーン・プロセスは音との相性が非常によかった。この映画は突然理由もなく襲撃されるという意味では『サイコ』との共通点が見られる。しかし『サイコ』が入念に襲撃とは無関係なドラマを展開させたのに対して、この映画ではそれをしていない。かといってロッド・テイラーのとんだ災難物語ともなっておらず、やや中途半端にキリスト教的な物語が語られている。この映画をドラマ部とアクション部に分けたとすればアクション部は文句なしに素晴らしい。それに比べて、もともとドラマの語りが饒舌ではないヒッチコックのなかでも、この映画は舌っ足らずな印象がある。しかし鳥の襲撃を見世物として魅せるショットの構成と音の使い方は、あの太っちょボディで50年くらい先を突っ走っている感じがしてなんともうれしい限りである。95点。