ハウスメイド

イム・サンス、2010。身体の落下がこの映画の重要なモチーフになっている。落下は堕胎でもあり対照としてお腹が丸々と膨らんだ妊婦がいる。そして大きな流れとして無関係とも思える冒頭とラストの落下はつながっているように見える。つまりこの映画自体がひとつの反復によって構成されているのだ。冒頭の手持ちカメラの撮影に象徴されるように、この映画はカメラに対してかなり意識的だ。ポジション、アングル、移動、手持ち、その他もろもろのショットがこれでもかと乱雑に登場する。ここで際立つのは上からのアングルショットだ。上下を提示することで落下を暗示させている。この映画は1960年のキム・ギヨン監督作品『下女』のリメイクである。このリメイク版はハウスメイドのチョン・ドヨンとユン・ヨジョンが素晴らしい。このふたりはキャラクターも演技も際立っている。チョン・ドヨンの弱々しい不幸の背負い方とエロスな描写はセパレートされることなく同居している。意志の弱さと強さも同居している。そのあたりの繊細な演技にはうならされた。ユン・ヨジョンはこれまで見てきた映画同様にパーフェクトな演技だった。このふたりの距離感もまた素晴らしく、ふたりの演技抜きにこの映画の魅力を語ることはできないだろう。他は悪役の義母以外はもっと描けたはずだし、子役をうまく活かせていないように思えたのは残念だった。もっとブルジョワ一家をえぐることができていればおもしろくなっていただろうし、もっとアイデアが炸裂していればヒッチコックあるいはオゾンのような凄みが出たと思う。90点。