リダクテッド 真実の価値

ブライアン・デ・パルマ、2007。イラク戦争においてイラク人レイプはかなり横行していて、この映画はそのひとつの事件を取り上げ、前後をフィクションとし、それをフェイクドキュメンタリー形式で撮影したものだ。兵士の持つカメラ、現地リポーターのカメラ、監視カメラ、ネット動画などが素材として使われている。この映画の功績はこれまで見たイラク戦争モノのなかでもかなり近い位置にカメラがあると思わせたことにあるだろう。この不快なビデオを見ていると本当に気分が悪くなるしムカついてくる。ただそれは既視感にあふれたアメリカの姿でもある。この映画における既視感というものは素人撮影や監視カメラの既視感と、それらによって描かれるアメリカそのもの既視感が同居したものだ。それを同居させているのもまた演出なのだ。ある意味予定調和な世界観やメッセージが撮影技法によって引き立っている。終盤のフェイクな感じは撮影技法と演出技法が見事に調和している。とにかく時代は戦争にカメラが入ることが当たり前になってしまったことをこの映画は教えてくれる。アメリカの既視感については本質的に戦争を描くことはなく、個人の資質の問題として描かれている。個人の資質を問うならば、もっと見やすい映像で見たかったという気はする。カメラの位置取りについてはすごく接近した気がするのだが、ドキュメンタリー技法によって良くも悪くも人物描写が雑になっている。いまはこの映画では描かれなかったスマホの時代だ。スマホがメインで優れた撮影技法の映画には出くわしたことがない。この映画を平気で飛び越えるような革新的な映画が見てみたい。95点。