Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

ヴィム・ヴェンダース、2012。この映画はピナ・バウシュの人物像に迫るようなドキュメンタリーでもなければ、どんだけすごい舞踏家なのかを見せつけるようなドキュメンタリーでもない。ヴィム・ヴェンダースとピナ・バウシュのコラボ作品といった趣なのだが、ピナ・バウシュの突然の死によってそれもちがった形になっているのだろう。劇中ピナ・バウシュの登場は非常に少ない。「カフェ・ミュラー」という舞台で、バウシュの踊りが見られるのが幽霊みたいにすごい。その「カフェ・ミュラー」などあわせて4作品が映画で取り上げられている。この映画は3D映画として上映されている。そのことは重要だ。演技を舞台から屋外に出してしまうこともとても重要だ。そこには映画によって伝えることができるものが見事に提示されているのだ。この映画はいわゆる映画の嘘も大いに活用している。カットされる瞬間に人物が変わっていたり、本番の舞台と撮影用の演技をカッティングによって横断しまくる。カットのきっかけはすべて身体の動きだ。バウシュの声は一切出てこない。そのうえ演者たちの同録の台詞も皆無だ。すべてはナレーションによって語られ映像と切り離される。ナレーションではバウシュのことは語られるが、それも決して多くはない。この映画は4つの作品を基調としている。その舞台にはあまり興味が湧かなかったのだが、それでもこの映画が素晴らしいと思えたのは、映画が映画であろうとする姿を見た気がしたことや、ヴェンダースのバウシュに対するアプローチの素晴らしさがあったからだろう。95点。