ローマ環状線、めぐりゆく人生たち

ジャンフランコ・ロージ、2013。ドキュメンタリー映画で初めてヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品。この肩書きがなければ、多くの大衆が見ることにはならなかったと思うし、実際多くの大衆が見るような作品ではないような気がする。昨今の新潮流ドキュメンタリーという感じではなく、アートフィルムという印象の映画だ。美的で詩的な映像がやたらと多く物語性も薄い。人物の描写も特徴的だ。カメラの存在を気にしないところまで深入りするのだが、いつも外からのショットや遠くからのショットを入れたがる。それによって人物は作為的にキャラクタライズされることなく存在している。これは演出としてそのようにしているのであって、演出力不足によって人物像が見にくくなっているわけではない。しかしその作風がおもしろいかといえば話は別だろう。この映画にはピンぼけやガラス越しのショットが多く見られ、雪のシーンでは音をかなり操作している。それらが映画全体に対して効力を発揮しているかどうかは疑問だ。独特の人物描写ですら、映画全体に対して効果を及ぼすには非力な気がする。とても抽象的な映画だからこそ、映画の時間をつないでくれる何かが必要だったと思う。この映画では環状線ゆえに環状するような形で人物が描かれている。つまりは反復されるのだが、効果的な反復とはなっていない。芸術性も娯楽性も中途半端な印象を受けた。90点。