ランジェ公爵夫人

ジャック・リヴェット、2007。冒頭のシーンで提示される壁。それはカーテンであったり鉄格子であったりするのだが、この映画はジャンヌ・バリバールとギョーム・ドパルデューを隔ててしまう壁を見事に描いている。ショットもすごいがカットもすごい。特にシーン終わりのカッティングの絶妙な素早さ。さらには字幕を多用しており、それが入るタイミングもいいし、その字幕があらわす主に時の経過も映画のリズムを形作っている。ウィリアム・リュプチャンスキーのカメラは相変わらず素晴らしい。カメラワークも映っているものもすべていい。計算しつくされた人物の動きとカメラの動きの演出は見事としかいいようがない。音へのこだわりも尋常ではない。ドパルデューの足音やバリバールの歌とピアノを筆頭に、足音、馬車の音、鐘の音、扉の閉まる音などが、ただの音としてではなく演出として効果を発揮している。この映画は文豪バルザックの作品の映画化なのだが、映像演出や音声の演出は、当然ながら原作には同じ形で存在しない。だから映画とはなにか、映画の素晴らしさとはなにか、という疑問に対してこの映画はわかりやすくサンプルを提示してくれる。その洗練された映画技法は斬新ではないが新鮮味がある。そこはやはりリヴェットの演出力のたまものだと思うし、ヌーベルバーグ出身らしいプリミティブさをずっと持っているからだと思う。95点。