この国の空

荒井晴彦、2015。戦時下の男と女の物語。戦時下という状況と、スタジオやロケセットの閉塞感が見事にマッチしており、特別な空間を生み出していた。大胆に時間を省略するシーン割に見られるように、ゆったりとした時の流れを作ることはしていない。それでいて演じられるドラマは性急なものではないため、空間と同様に時間の扱いもユニークなものになっている。水が重要なモチーフとして有効に機能しており、神社の水のシーンやラストシーンは特に印象深かった。おもしろいと思ったのは二階堂ふみの視点で映画が語られることだ。二階堂ふみは確固たる信念を持ってはおらず、一本筋は通っている感じなのだが、どことなくふわふわしている。あからさまな反戦メッセージなどを自ら発することもないし、あからさまではないエロスの発露もまた、自覚がないがゆえにふわふわとした魅力があった。長谷川博己との関係についても、感情を言葉にすることはほどんどない。ラストのストップモーションで二階堂ふみらしからぬ重要な意思を持った言葉が発せられ、エンドクレジットではその二階堂ふみが詩を朗読する。この構成もまた明瞭さを回避する意味でも、映画美学という点から見ても素晴らしいものがあった。戦時下という状況における市井の女のドラマが丹念に描き出されており、とても興味深い作品となっている。95点。