リマスター:サム・クック

ケリー・ドゥエイン・デ・ラ・ヴェガ、2019。Netflix映画。サム・クックの生涯が、当時の彼を知る人たちのインタビューを中心に、当時の写真や映像、それに本人のインタビュー音声を交えながら語られていく。サム・クックが内面を吐露する映像などはなく、映画も彼の人間性や芸術性に迫るというよりは、時代の激流のなかにいるサム・クックの生き方を描くことで浮かび上がってくる彼の姿をとらえようとしているように見える。時代の激流とは、人種差別であり、公民権運動であり、黒人のパブリックイメージを押し付けるレコード業界だったりする。それにしても、あのやさしい歌声からは想像もつかないほど強い精神を持って戦っていたであろうサム・クックには感銘を受けた。その姿勢が幸か不幸か公民権運動という激流のメインアクトのひとりとみなされてしまう。本人はひるむ様子もないのだが、レコード会社からは都合の悪い黒人とみなされてしまう。で、独立して自らが社長を務める会社を立ち上げるも、そこにあらわれるのが悪名高きアラン・クレイン。そして疑惑の射殺事件が起こる。しかし事件はLAではよくある黒人の射殺事件として片付けられる。彼が歌うようにアメリカに、黒人に、変化のときは訪れたのだろうか。事件の陰謀論に新展開を期待していたからそこは残念。90点。