ボルベール <帰郷>

ペドロ・アルモドバル、2006。冒頭、墓を掃除する女たちが登場する。東風が強く吹いており、ドリーするカメラがそれらを映していく。この映画は導入部で近親相姦絡みの殺人事件モノというイメージを鮮烈に見せつけておきながら、一旦それを保留する。その保留のさせ方が見事だ。幽霊モノのようなユーモラスさのある展開を見せたり、末期がんの友人の物語があったり、死体置き場のレストラン営業ではペネロペの魅力やアルモドバルらしい色使いが満載だったりする。物語の幹の部分であるはずの殺人事件は、実際に幹の部分にはなるのだが、枝葉となる物語がそれぞれ幹のようにぶっといのだ。それらが絡み合いながら物語は進んでいくのだが、冒頭の掃除する女たちや東風やカメラワークが示す通り、映画は女たちの動的な魅力に満ち溢れたものになっている。男であれば頭を抱え、身動きが取れなくなりそうなところ、女たちは動きまくる。移動に次ぐ移動が映画に活力を与え、絶品の演技を見せるペネロペが加速度的に映画に動的な魅力をもたらしていく。そして終盤になり平行して描かれていた母と子の物語が、複雑な類似性を見せることになる。こうしたことが、ただ会話のみによって語られていることは注目に値する。フラッシュバックもなければ、秘密の話を盗み聞きするようなスリリングな演出もない。だからこそレストランで歌うペネロペは鮮烈に記憶され、ラストの台詞もこころに響くのだろう。100点。