MAD探偵 7人の容疑者

ジョニー・トー、ワイ・カーファイ、2007。マッドな元刑事が元部下から捜査の協力を求められる。その前に伏線が張ってあるように、犯人はすぐに浮かび上がる疑惑の刑事だ。それ以外に疑惑の人物なんて登場しない。ラストで物語上の見せ場は登場するものの、この映画は物語映画としての体裁をほとんど成していない。物を語るのがマッドだっていうのもあるのだが、物を語ることのプライオリティが低いのだ。映画はひたすらに映画的な遊戯を高レベルな娯楽として提供している。映画形式の原則にのっとり、類似や反復、差異やヴァリエーションといったものを用いて見る者を魅了しまくるのだ。マッドな探偵ラウ・チンワンの目には、人間の内面がヴィジュアル化したり、いない人間が見えたりする。これは特殊能力なのか、ただマッドなだけなのかは曖昧だ。しかしそれによって映画の世界は通常の世界とラウ・チンワンの世界のふたつが存在することになる。このふたつの世界、ふたつのフィクションが交錯する演出が見事なカッティングによって表現されている。この映画のすごさは、全編を通じて映画の持つダイナミズムに満ち溢れているところで、だからダレることも一切なくあっという間に時間が過ぎてしまった。非常に映画らしい映画であり、ふたりの監督の連携も良好であったように見えた。95点。