リアル鬼ごっこ

園子温、2015。 基本的に物語が破綻しており不条理劇といえなくもない。この映画の前半は、男性の欲望から逃げる女子高生の逃走劇といったような展開で物語は進行していく。しかし男性は終盤にしか登場しないため、男性的な部分は風が担っていたり、カメラが担っていたりする。そのため下劣な性的描写に陥ることなく女子高生の逃走劇がはじまるのだ。しかし不条理劇だから逃走の明確な意味付けはなされていない。主演のトリンドル玲奈の一挙手一投足が素晴らしい。演技がかっておらずとてもリアルなのだ。すごく不安定な足取りや表情を見ていると危なっかしくて仕方がないのだが、この映画では桜井ユキという補佐役を配置しているから、トリンドルの魅力を思う存分堪能できる。後半はトリンドルが篠田麻里子に変身して真野恵里菜に変身して、最後にトリンドルに戻る。この配役の変更はかなり疑問だった。トリンドルが走る、というのがこの映画の軸だと思っていたからだ。トリンドル以外は脇役扱いだったし、それならトリンドルがやればいいんじゃないかと思った。しかしトリンドルがいなくなることで、物語は混沌とした不条理劇の度合いを増していく。それがラストの美しさを際立たせているともいえる。トリンドルをとにかく動かして、それを空撮や俯瞰ショットなどを用いて撮る。そのスタイルには明確なヴィジョンが見えた。90点。