ラブバトル

ジャック・ドワイヨン、2013。父親が死んで故郷を訪れたサラ・フォレスティエは、ピアノを相続したかったのだが姉夫婦がいてうまくいかず、昔いい仲になりそうになったジェームズ・ティエレのところを訪れる。そっからはもうラブバトルの開始である。この映画に見られる情念の肉体化というのはドワイヨンの映画作家としてのテーマにもなっていて、そのスタイルはカサヴェテスにも通じるものがある。この映画の情念はかなり常軌を逸した強度を持っており、それゆえにほとんどがラブバトルのシーンのみによって映画を成立させてしまっている。葛藤にまみれた前半は台詞も多いのだが、それが徐々に少なくなり、バトルの深度が深まると、台詞は必要ではなくなりバトル自体が愛の交歓となっていく。そのさまはひたすらに美しい。しかしこのバトル、あまり背景の説明がされていない。昔いい仲になりそうになったふたりであり、女は男に父の影を見ている。そのようなことは、さらりと提示されるだけで、父から愛されなかった女の愛の復讐劇、というような構図は必要不可欠な要素ではなく、ただバトルによる関係性の変化を映画はひたすらにとらえていくのだ。そして脱げば脱ぐほどに見えてくる、肉体の動物的な躍動の美しさ。ふたりと共にかなりバトっていたカメラも見事な仕事っぷりだった。95点。