それでも夜は明ける

スティーブ・マックイーン、2013。19世紀アメリカの実話に基づく物語。自由黒人であったキウェテル・イジョフォーは騙されて黒人奴隷となり、12年の後、自由黒人にもどるというお話。黒人奴隷を扱う他の物語との差別化という意味では、キャラクターが立っているだけに、すごくもったいない映画になってしまった気がする。この12年には彼ならではの物語が希薄だ。そして12年にはとても見えない。この調子では結局のところ何度も見てきた奴隷制度のえげつなさを再見しているだけのように感じてしまう。もちろん役者の演出やロケーションの素晴らしさや、それを捉えるカメラなどは高いレベルのものだ。ただこの映画は二重苦に縛られているような気がする。ひとつは実話に基づく物語という点。実話を逸脱するにしても限度がある。もうひとつは、これは原作から外れるから個人的な願望なのだが、このキウェテル・イジョフォー演じるソロモン・ノーサップという男は、奴隷生活12年の後、自由黒人となり、奴隷解放運動に邁進した、とエンドクレジットには書いてあった。それこそ彼のキャラクターのオリジナリティなのではないのだろうか。2時間半映画にしてもいいからそこを描いてほしかった。奴隷生活をリアルに淡々と描いた厳しい映画で、良い部分も多かった。でもそこ止まりの映画のような気がする。90点。