死刑台のエレベーター

ルイ・マル、1957。社長夫人ジャンヌ・モローが、不倫相手の部下モーリス・ロネと社長暗殺を企て、見事完全犯罪を成し遂げたはずが、モーリス・ロネはエレベーターに閉じ込められ、ジャンヌ・モローは夜の街を徘徊することになる。この映画は一見すると車を盗んで人殺しをする若者ふたりのエピソードがどうにも邪魔なような気がしてしまう。ところが徐々にモローとロネと平行させながら対照あるいは類似させることによって、モローとロネの姿が一層引き立つ効果を生んでいることがわかる。クローズアップを多用するモローの夜の徘徊は被写界深度の浅いアンリ・ドカエの撮影によって孤独が夜から浮かび上がってくるようだし、ひとり密室スリラーを演じるロネは自由に動き回る若者たちと明確な対照をみせる。この映画の素晴らしさはサスペンス映画であるのに、スリルがあまり発動されないことだ。スリルよりも夜を彷徨うモローが描かれるべき映画であるし、夜が明けて一晩で老けたモローが映し出される映画であるのだ。それはラストにつながるふたつの要素を見ても明らかだ。これから老いていく日々に思いを馳せ、過去の停止した時間に思いを馳せるモローの姿がそこにはある。この映画は冒頭のスーパークローズアップからはじまるモローの時間=老いを描いた映画であるといえるだろう。95点。