偽りなき者

トマス・ヴィンターベア、2012。少女の何気ない嘘によって性的暴行の嫌疑をかけられ、村八分を食らう男の壮絶な生き様を描いた映画。ある程度濃厚な社会的集団に属している人たちにとってはリアルに恐ろしい話だろう。冤罪の被害者マッツ・ミケルセンにもなりうるし、それを村八分にする元仲間たちにもなりうる。この映画のおもしろいところは、マッツ・ミケルセンを加害者としてしか見ない人間にスポットを当てないところだ。幼稚園の園長などはその典型だろう。で、少女の父トマス・ボー・ラーセンなんかは、性的暴行を受けたとされる娘と、親友であったミケルセンとのあいだで苦悶することになる。トマス・ボー・ラーセンは主人公にもなりうる重要なキャストだった。このミケルセンとラーセンのラインは重要で、あとは仲間もいたりするのだが、物語はひたすらミケルセンをいじめ抜いていて、あたかも試しているように見える。ただミケルセンは冤罪を晴らすようなマネはしない。無罪であるから尊厳を持って日々生活したいだけなのだ。だから少女から真相を語らせようとも思わない。これは終盤でうまくいくようにも見える。しかしラストで曖昧にぼかされる。事件は過去なのか未来までつづくのか。気味の悪い映画は疑問を投げかけ気味の悪いまま終わるのだ。95点。