黄金

ジョン・ヒューストン、1948。1920年代のメキシコ。職もなくうらぶれていた男ハンフリー・ボガートは、同じような境遇のティム・ホルトと共に金鉱堀りの話をするおっさん、ウォルター・ヒューストンの話に飛びつく。そして金を見つけるにつれ三人の関係が崩れていく。この映画は、ボガートが見せる人間の醜い部分の強烈さに尽きるだろう。最初っから善良な人物ではないのだが、金をつかむと精神に異常をきたしてしまう。それを演じるボガートの、常人さを残しつつ狂気が立ち現れる凄みは圧巻である。個人的にはこんなに怖いボガートを見たのは、ニコラス・レイの『孤独な場所で』以来のことだ。三人組で金を探す物語なのだが、三者三様のキャラクターでありながら、あからさまな類似や対照を見せないところが素晴らしい。どんな展開になるのか、誰が信じられるのか、誰がどうなってしまうのか、予測がつかない。結局ボガートは一直線に落ちていくのだが、その落下地点の描き方が秀逸だ。刺殺されるところも、死体すらも映さない死の演出は、風に舞って見えなくなる金との絶妙な類似が見て取れる。ボガートは精神的に狂っていく男で、ホルトはなにか背景がありそうな影のある男だ。ふたりとも陰と陽でいえば陰である。だから陽のウォルター・ヒューストンがひときわ冴え渡っていて、アカデミー助演男優賞受賞も納得の好演だった。95点。