海街diary

是枝裕和、2015。前作『そして父になる』の福山雅治が、この映画では形を大きく変えて『そして姉妹になる』という具合に広瀬すずの物語になっている。しかしドラマチックな展開や感情の起伏を抑えて描かれており、見た印象は美しい鎌倉の映画という感じだ。3姉妹+広瀬すずを深く追うこともなく、トラウマ発覚や事件勃発のようなこともない。日々が淡々と綴られている。どのエピソードもほのかに淡く、微笑ましいものだ。実際のところ何も起こらずに映画が終わってしまったという印象すらある。是枝作品を全ては見ていないのだが、物語の温度というのがあって、この映画は常に温度が安定している。広瀬すずの温度だけが違うというところはあるのだが、それも抑制される。広瀬すずには綾瀬はるかとの平行性や類似性が見て取れる。しかしここも強調した描き方をしない。広瀬すずの重さは3姉妹に吸収される。その3姉妹は、樹木希林と大竹しのぶのやり取りなんかを見ていると、断然若いのだ。この現代的な若さ、美しさでもって、鎌倉を描いていることろがこの作品の大きな魅力のひとつだろう。湘南界隈で若き日々を過ごした人たちや、50年代の小津や成瀬を見て過ごしてきた映画好きにとって、鎌倉という風景は特別なものだ。そこに組み込まれた現代の3姉妹の物語。そして不穏な感じのなさ。懐かしさと現代性のあいだをゆらゆらとゆれるているような作品だ。90点。