ルーム

レニー・アブラハムソン、2015。七年間ものあいだ「部屋」に監禁された女性と、そこで生まれ育った息子の脱出劇からの再生ストーリー。この映画には描こうと思えばスリルや感動をたくさんぶち込めるような作品だ。しかしながらそれらは省略されたり機能を果たさなかったりする。息子の脱出はのんびりしているし、母の自殺未遂もショッキングな描き方をしない。二度に渡る母との再会はほとんど省略されているし、極悪だけど凡庸な犯人は、存在をカメラに無視されているようだし、その後については何も語られない。そうしたありきたりのスリルや感動は省かれ、そのかわりに息子の主観ショットが大きな役割を果たしている。被写界深度の浅い窮屈なショットは、「部屋」の窮屈さゆえに必然性が生まれている。そして「世界」に出ると主観ショットは混乱を極めることになる。物語は「部屋」と「世界」、監禁と解放に分かれている。解放後の母ブリー・ラーソンと息子ジェイコブ・トレンブレイの「世界」への適応の対比が見事だ。悩める母と順応性の高い子どもといってしまえばそれまでだが、その描かれ方が素晴らしいのだ。ほほえましい義理の祖父とのコーンフレークのシーンはいいきっかけになっていたし、祖母とのヘアカットのシーンも素敵だった。やや予定調和的で、ずさんな部分もある脚本に感じられたのだが、息子を主体とした映像演出は一貫していた。95点。