シンデレラマン

ロン・ハワード、2005。実話に基づく物語。世界ヘビー級チャンピオン、ジェームス・ブラドックの波乱に満ちた人生が、大恐慌時下のニューヨークの底辺の暮らしと交錯させながら描かれている。そしてそれがこの映画の一番の見所となっている。ブラドックといえばヘビー級史に残る番狂わせを演じたマックス・ベアとのタイトルマッチ、そしてジョー・ルイスがチャンピオンになった試合の相手として有名なボクサーだ。ボクシングシーンに限らずカメラがとても素晴らしい。特にブラドックを演じるラッセル・クロウの主観ショットがいたるところで緊張度を高めている。抑えの効いた人物描写も特筆すべきものだ。ラッセル・クロウの描かれ方は、他のボクシング映画では見たことのないものだった。褒め言葉ではあるのだが、優等生すぎておもしろくないのだ。そのうえ他の登場人物もラッセル・クロウとの対照を見せるどころか類似する人物が多い。この現実的な人物描写によって単なる人間ドラマが拡張され、結果として当時のニューヨークの底辺を際立たせることに成功している。しかしマックス・べアは悪玉として安易に描かれすぎだろう。レニー・ゼルウィガーとのシーンは不要だと感じたし、他にも削れる箇所はあるような気がした。長尺ではなく2時間弱くらいで十分という印象が残った。でもボクシング映画ってなぜか引き込まれてしまう。95点。