タバコ・ロード

ジョン・フォード、1941。老農夫の住むタバコ・ロード界隈はさびれており収穫もほとんどない。地主もカネがなく銀行に土地を売却してしまう。銀行は年間100ドルで農地を貸すというのだが、そんなカネはない。さて老農夫はどうするか、という話。これは原作小説があり、有名な舞台劇もあるらしい。この映画は貧困や家族制度の崩壊や老いやなんやかやが描かれているのだが、描かれ方が相当にイカれている。哀愁なんてそっちのけで常軌を逸したコメディが展開されるのだ。特に息子とその嫁のハイテンションっぷりには笑いなんて通り越して怖いくらいだった。嫁はすぐに歌い出すし、息子はハイテンションでクラクションを鳴らし、ブチ切れまくっている。しかしそんな彼らは周囲から浮くことはない。そもそもコメディであるから登場人物の多くはおかしな人間なのだ。この映画では歌と車が強烈なインパクトで描かれており、常軌を逸するスイッチとして象徴的に使われている。浮世離れした歌は他人をも巻き込んでしまうし、車はまるで破壊されるために存在しているように見える。物語は哀愁ホームドラマの側面を見せながら終わるのだが、かなり厳しいハッピーエンドとなっている。老夫婦は常軌を逸した場面でも現実的な場面でも変わらず好演をしていた。ただそれ以外は振り幅の小さい登場人物が多かったような気もする。95点。