ローリング・サンダー・レヴュー

マーティン・スコセッシ、2019。『ノー・ディレクション・ホーム』はかなり史実に沿った映画だった。つまり具体的な映画だったといえる。この映画は全くの逆で、史実をあえてぼかすことで、かなり抽象的な映画になっている。そもそもローリング・サンダー・レヴュー自体、一般的なライブツアーとは大きく異なる。内々の仲間たちではじめて、そのなかでスカーレット・リヴェラのような街で拾ってきた女を抜擢したりして、3時間のライブが肥大化して、ギンズバーグに与えられる時間が数分になってしまったりする。チケットにディランの名前はないし、発表は開催数日前だし、チケットは格安だし、何もかもが型破りなツアーだったのは間違いない。映画の構成も型破りな感じを踏襲しているようで、ストーリーを作るのを避けるような構成になっている。素材が不足しているのは間違いないのに、現在の語り手をあまり使っていないところからもそれは伺える。このラフな編集では大手映画プロダクジョンがゴーサインを出すとは思えない。だからNetflixがローリング・サンダー・レヴューを映画化したことは必然であるように思える。見所はもちろんディランなのだが、ディランと息ぴったりのジョーン・バエズ、孤高の天才ジョニ・ミッチェル、それにスカーレット・リヴェラも印象的だった。見逃している部分もあるから、何度も見たくなる映画だ。95点。