しあわせの隠れ場所

ジョン・リー・ハンコック、2009。NFL選手のマイケル・オアーの半生を描いた物語。この映画、バリバリの娯楽映画なのだが、かなりアメリカ的な映画にもなっている。貧富の差、人種問題、偏見などが状況として設定されるのだが、それらは映画で描かれることはほとんどない。放置されるのではなく省略されるのだ。ではなにが描かれているのかといえば狂気に満ちたサンドラ・ブロックの善意や、家族の善意、その善意の押し売りに対するマイケル・オアーを演じるクィントン・アーロンのリアクションの数々だ。こんな善意や奇跡に満ち溢れた映画を無難にまとめるのは簡単なことではないだろう。サンドラ・ブロックが金持ちであることはあまり利用されないし、サンドラ・ブロックが黒人を家に住まわせることも、さほど重要なトピックにはならない。偏見や人種問題や貧富の差といった事柄が省略されることで、この映画はその奇跡的な物語だけを抽出して描くことに成功している。その結果、サンドラ・ブロックとその家族の表情ががいかに輝きつづけているか。クィントン・アーロンがいかに輝きつづけているか。サンドラ・ブロックとその家族のパーフェクトな善意は、家族愛がテーマの映画なのだが、宗教的な幸福感に近いものがあった。95点。