初恋のきた道

チャン・イーモウ、2000。ある村で40年間教師をしていた父が亡くなった。息子が帰郷するのだが、母は昔ながらの葬儀をするといって聞かない。そんな母を見て、息子は父と母の恋物語を思い出す。この映画は人生のあるピーク時を見事にとらえている。まず怒涛のごときチャン・ツィイーのクローズアップが素晴らしい。これすなわち遠くを見つめるチャン・ツィイーであり、実際のところ夫になる男との絡みなんてほとんどない。そして結婚してからの生活も描かれない。だからこれは本当に珍しいことなのだが、邦題が素晴らしいと思う。学校近くの井戸と家をチャン・ツィイーは映画のなかで何度も往復する。これはその後40年間、夫が死ぬまで通った道だと息子は語る。40年間もあんな調子で恋していたのだチャン・ツィイーは。そう考えたときに、現在までの40年間が怒涛のように押し寄せてきて、しかしながら、外見とかの問題とかも鑑みて、あの初恋のときが一番輝いていて、映画というものはそういう時期を描くのだなと教えられた。あとは現在の描写が、はじめは過去と対照をなしているのだが、終盤には過去との類似というか、過去があるからこそ現在があると思わせてくれた。現在はどんな形でもハッピーエンドにはならない。しかし映画は現在と過去を類似と反復を用いて交錯させ、過去に戻って行為を反復させながら素晴らしいハッピーエンドに導いている。95点。