八日目の蝉

成島出、2011。原作小説を読んでから映画を見た。映像ってすごいなと思ったのは誘拐犯である永作博美と、20年後の被害者である井上真央が似ているということだ。顔が似ている。そして映画は小説とはちがって、20年前と現在を平行して描いている。行為が反復されるなかで見えてくる類似や対照といったものは、永作博美と井上真央の顔の類似によって効果が強化されている。映画としては見せ場をあえて抑制してサスペンスなどは発動せずに描いている。この見せ場の抑制はよくわかるのだが、ではそれによってなにが強調されているのかといったら疑問が残る。小豆島のシーンに限らずこの映画はかなりのんびりした展開を見せる。永作博美の逃走劇ですらかなりのんびりしている。そういう演出は効果的な部分もあるのだが、いかんせん二時間半映画であり、二時間半があっという間に過ぎるような映画ではなかった。映画でも小説と同様に男性は排除されるのだが、写真館の田中泯だけは異質な存在感を放っており、写真館のシーンは映画オリジナルの見せ場となっている。釈放後の永作博美の痕跡も写真館にのみ存在する。だから当然のことながらそこが分岐点となり映画のふたつの平行するラインは変化を見せる。この終盤の演出はとても見応えがあった。ただ娯楽映画としては、サスペンスでなくてもいいから、巧みな演出でもってもう少し惹きつけてほしかったところだ。90点。