バニシング・ポイント

リチャード・C・サラフィアン、1970。車の運び屋コワルスキーはデンバーからサンフランシスコまで車を運ぶのだが、友人と15時間以内で届けるという賭けをした。全速力で飛ばすコワルスキーと追う警察という単純なあらすじと、深いテーマを併せ持ったニューシネマの代表的作品である。特異な点はコワルスキーが狂気の爆走野郎ではないという点だろう。カーチェイスして川に落ちたヤツの安否を確認したり、ヒッチハイカーを簡単に車に乗せたりする。道中でコワルスキーのキャラクターは肉付けされていくのだが、警官時代に上司のレイプを止めたことと、恋人が死んだことが強調される。警察は悪として定義付けられ、恋人の不在はこの爆走にかなりの影響を与えているように感じた。もうひとつ強調されているのは、ラジオDJとの関係に代表されるホモソーシャルな心の交流である。男の絆的な関係があちこちに散見されるなか、ラジオDJとは会うこともなく心を通わせていく。そしてコワルスキーはヒーローとなる。一般的なヒーロー像とはかけ離れたコワルスキーの温和さが、独特のホモソーシャルな雰囲気を作り出している。警察権力には従わないコワルスキーなのだが、最後には消失する。映像として単純に見れば自爆をする。ここにはいろんな解釈をぶち込めるだけの説得力がある。あとはもう少し音楽のセンスがよければ最高だった。95点。