顔たち、ところどころ

アニエス・ヴァルダ、JR、2017。アニエス・ヴァルダとグラフィティアーティストのJRのふたりが名もなき人々を素材にした巨大ポートレートを作りながらフランスの田舎町を旅するロードムービー的なドキュメンタリー映画。まず、JRの優しさとヴァルダの持つ軽やかさが映画全体を覆っている。まるでエッセイのような映画だ。ふたりが放つ独特の空気感があり、飄々としていて、やさしくて温かい雰囲気に満ち溢れている。そこは他の映画とは決定的に異なる部分で、この映画の最大の魅力といえるだろう。田舎の名もなき人々である被写体を浮き上がらせるのは、まずJRの作品があって、それとヴァルダらしい洞察力のある人間観察というものがあるのだが、それは分業ではなく共同作業によって生み出されている。しかし共同作業であることをあえて強調もしないから、あまり意識することもない。ドラマが少ないとは思うのだが、それでもアンリ・カルティエ=ブレッソンの墓参りや、一夜にして消えた海辺のギイ・ブルダンの写真などはインパクトがあった。ルーブル美術館でのゴダールへのオマージュがあり、JRはゴダールの類似としても描かれ、最後にゴダールに会いに行くのだが、そこはさすがにハラハラする展開が見られた。なにはともあれこの映画の雰囲気、そしてヴァルダが醸し出す雰囲気は、とてもチャーミングで幸せな気分にさせられた。95点。